ウィラーの台頭とチェーン店信仰とバス会社の怠慢
今日は泊まりのお出掛けで高速バスに乗る。今はバスターミナルで発車までスマホを充電しながら待っているところだ。
ところで、今日乗る高速バスは日本交通という地元のバス会社で、鳥取県や京都の北の方と関西の間を走る路線を運行している。
このバス会社、Webサイトのリンクを貼ったのだが、著しく使い勝手が悪い。
今日日インターネットの予約が「メール予約」とかいう他じゃ絶対見ないシステムで、
手軽に空席照会できないし、慣れてる人には簡単なのかもしれないが、初めて使うと普通の高速バスのネット予約とかと勝手が使いすぎて意味がわからない。
そもそも、日本交通さんに限らず、
地方のバス会社だったり鉄道会社が運行してる高速バスは、もともと地元のユーザーが回数券とかで定期的な利用をするのが多かったんであろうので、ネット予約の仕組みが煩雑で分かりにくい。
例えば、東京のバスタ新宿から「旧来の高速路線バス」(鉄道会社などが運行してるもの、後述)に乗ってどこかに出掛けたい、となると、
「高速バスネット」「ハイウェイバスドットコム」「発車オーライネット」という三種類のポータルサイトから目当ての行き先を調べないといけない、という複雑さがあった。
しかも、この辺のサイトはつい最近までネット黎明期みたいな洗練されてないデザインで、見映えはお世辞にも良くはなかった。(一部のトンチキなマニアは除くが)
ここで、である。
おそらく若い読者は、「高速バス」と聞いて「ウィラートラベル」を思い浮かべる人が数多くいるんじゃないかと思う。
ピンク色の車体、格安便から快適な割高便まで多彩な運賃体型、全国くまなく巡らせたネットワークが売りの会社だ。
僕は一時期、ちょうど軽井沢の方で格安のスキー夜行バスが崖の下に転落して多くの死者が出た時期にバスマニアの知り合いとつるんでたことがあったのだが、
バスマニアは軒並みウィラーのことを敵視していた。
なんでも、ウィラーは当時の法律では限りなく黒に近いグレーだった「下請けの会社に運行を委託し、上澄みの美味しいところだけを搾取する旅行代理店」の体を取ってて、
悲惨な事故を起こした軽井沢の会社と同じ仕組みだったからだ。
しかも事故を期に法改正があり、ウィラーが正式な路線バス運行会社になったので、彼らは「ツアー上がり」と蔑視しヘイトを溜めていた。
だが、ウィラーのやり方は営業的には天才的なセンスがあるなぁと思う。
まず、可能な限り全国に路線を広げ、「高速バスのトップランナー」を目指す方針でいっていた。
この手の話ってブランドイメージがすごく大事で、特に若い世代は地方民都会民問わず全国チェーンに安心感を覚えるので、「夜行バスはウィラー」ってのが定着した。
もちろんネット予約の仕組みも分かりやすく明快だし、全国を走っているのでふらっと旅立ちたい都会人も使えれば、ユニバやディズニーにも直行なので地方民も使いやすい。結果、どんどん浸透していく。
地方のバス会社は勝ち目がなくて次第に競争力を失っていく。
まるで、よくいう「商店街を食い荒らす大型ショッピングモール」と同じ構図である。でも仕方がない。消費者が求めてるのはそちらなのだから。
これはひとえにバス会社の自助努力を怠った結果の敗北だと思う。
地方のバス会社、それこそ今から乗る日本交通とかそうだと思うけど、
高速バスで大きな収益をあげて、それを赤字の一般路線の補填に当てて公共交通を守っていく、そんな使命があるはずだ。本来は。
便利で使いやすさを求める若い消費者をもっと意識しないと、どんどん地方の富は都会に吸い寄せられると思う。改善を願いたい。